世の中にはついてよいウソがあります。
相手に気をつかわせないためのウソです。
M君は、とても寡黙で温厚な学生です。
ある日の昼休み
私は、昼食を早めに済ませて午後の教室に向かいました。
その教室は、授業での「密」を避けるために使わせていただいている大きな教室で、普段は使っていません。
早めに行ったのは、机をアルコールで拭くためです。
教室に入ると、既にM君が1人教室に入っていてスマホを見ていました。
私が机を拭き始めると、「先生、やりましょうか?」と言って手伝いを申し出てくれました。
「お願いできる?」
「ええ、スマホ見てるだけですから」と、少し照れながら、奇麗に机を拭いてくれました。
1週間後の同じクラスの授業。
やはり早めに教室に行くと
M君が、一人で教室にいて勉強中でした。
私が荷物を置いて、顔を上げると、
M君が、アルコールと台ふきを手にして、「先生、机拭きます」と。
「勉強中じゃないの?」(私)
「いや、暇なんで・・・」(M君)
またまた、奇麗に机を拭いてくれました。
授業開始5分前くらいになり、クラスメイトが教室に入ってきて、机を拭くM君に気付き、
申し訳なさそうに、「あっ、すいません。ありがとうございます。」とM君に声をかけていました。
すると、M君はニコニコとしながら小声で
「先生と二人でいてもさあ・・・・・・だから」
・・・良く聞こえませんでしたが、明らかに仲間に気を使わせない言葉でした。
周囲に気をつかわせない優しさから出るウソってありますね。
お皿に残ったお料理を相手に譲るとき、「もうお腹いっぱい」とか。
全然、方向が違うのに、「車で送っていくよ。そっちへ行くついでだから」とか。
仲間に「机を拭いたぞ」アピールもしないし、
私に「机を拭きます」アピールもしない、
黙々と机を拭く。
本当に優しい学生です。