「やっぱりおおかみ」が伝えたかったこととは

伝える

「やっぱり おおかみ」を自己表現の授業の題材としました。

自分の考えを述べたくなる「衝動」が生まれる素晴らしい教材でした。

 

「やっぱり おおかみ」(福音館書店)とは

佐々木マキさん 作・絵

1973年発行

3歳児から小学校低学年向けの絵本です。

 

この本に出合ったきっかけは、尾原和啓さんが、幼少期に影響を受けた本として紹介していたことでした。

一匹だけとなってしまったおおかみが、仲間を求めて街をさまよいます。

ウサギやブタにも逃げられて、友達ができません。

最後は、「やっぱり おおかみ」

「そうおもうと なんだかふしぎに ゆかいな きもちに なってきました。」

という、絵本です。

 

尾原さんは、大抵の子供向けの絵本は「おおかみと仲良くしよう」というエンドになるのに、この絵本は「やっぱりおおかみ」で終わる。

この絵本に励まされ、その後の人生に大きく影響したそうです。

他人の価値観に無理して合わせなくてもいいんだ。

自分は自分でいいんだ、と。

  

この本のラストに気球が屋上から飛んでいくシーンがあります。

おおかみが切り離したのか、気球が飛んでいってしまったのかは描かれていません。

「この気球は何を意味しているのか」

これについて、授業で全員に考えを述べてもらいました。

正解は作者の佐々木マキさんしか判らない。

正解がないことだからこそ、自分の考えを自由に述べよう!

仲間の考えを否定しないで聴こう。

 

驚きです。

人前で自分の考えを述べるのが苦手という学生も、この問いかけに「私の考えを聴いて欲しい」という欲求が湧き出てくるのがわかりました。

あるクラスは、次回の授業で考えを述べてもらうことにしましたが、「忘れてしまうので書いておきたい」といって、求められずとも、考えを書き出している学生がたくさんいました。

 

ここまで、多くの意見が出るとは、私の想定を超えました。

気球が意味するもの

「おおかみとして生きていくという決意だと思う」

「これまでのこだわりを吹っ切ったのだと思う」

「おおかみは、仲間に逃げられた時『け』という声を発している。ここでも『け』と言っているから、気球も飛んでいってしまったと思う」

「これまで、地上レベルで仲間を探していたおおかみが、視点を変えて空から仲間を探そうと思った。しかし、それは違うんだ。やっぱり地に足をつけていこうと気球を切り離したと思う」

「おおかみだけ表情が描かれていない。そもそも死んでいたのかも」

「最後におばけが出てくる。おばけだけは逃げていないから、気球に乗って死を選択しようと思ったのではないか。でも、やっぱり生きようと思った」

「おばけにすら恐れられていたと思う。だから、おおかみとして生きようと思った」

  

授業を終えた感想には「いろんな考えがあって驚いた、楽しかった」と。

同じ解釈であっても、自分の言葉で発言するので、全く同じ発言がなかったことも驚きです。

ここまで膨らみがある絵本であったとは、やってみるまでわかりませんでした。

何より、「自分の考えを伝えたい」という衝動が生まれたことが嬉しく思いました。

そして、「おおかみが可愛そうです」という優しい感想があったことも、嬉しく思いました。