自己紹介で自分の名前を名乗る。
何気ないことのようですが、難しいことです。
私も、自分を人の前で名乗る時、なんとなく、しっくりこない感覚があります。
友人や先生の名前を呼ぶ機会は多くあります。
自分の名前を名乗る回数は、それほど多くありません。
これから学生たちは、面接や自己紹介やなど、多くの場面で名乗らなくてはなりません。
授業で、「〇〇〇〇です。よろしくお願いします。」とだけ、全員に言ってもらいました。
ほぼ全員が、しっくりきてないような感じでした。
名乗った途端に、自分ひとりが、クラスで浮くような感覚。不安な感じです。
そのためか、早口だったり、発音がはっきりしなかったり。
愛情たっぷりに母親に「〇〇ちゃん」と呼び掛けられてきた、あの名前と、今、クラスで名乗る名前は同じなのか、とすら思えるほどの、しっくりこない感覚があるようです。
わが名をよびてたまはれ
いとけなき日のよびなもてわが名をよびて
たまはれ
あはれいまひとたびわがいとけなき日の
名をよびてたまはれ
風のふく日のとほくよりわが名をよびて
たまはれ
庭のかたへに茶の花のさきのこる日の
ちらちらと雪のふる日のとほくより
わが名をよびてたまはれ
よびてたまはれ
わが名を よびてたまはれ
わが名をよびて 三好達治
若者が自分の名前を他人に名乗るということは、この世に生を受けてから、時とともに、鎧を身にまとったことを思い知られる瞬間かもしれません。
三好達治の詩にある「わがいとけなき日の名をよびてたまはれ」、そう叫びたくなるほどの、脱げない鎧。
大変だけど、自分の名前を名乗ることで、大人になっていく自分を見つめていきましょう。
親が愛情込めてつけてくれた素敵な名前です。
幼少の頃、「お名前は?」と聞かれて、「〇〇〇〇でしゅ」と喜びいっぱいに答えていた頃のように、大きな声で自分の名前を言ってみましょう。