何かいい映画ないかな・・・
と思っていたところ、「野生の教養 飼いならされず、学び続ける」(岩野卓司・丸山哲史 編 2022年11月出版)の本の中で、明治大学政治経済学部の山岸智子教授がイラン映画について述べていたので、観てみることにしました。
アッパース・キアーロスタミー監督(キアロスタミ)の映画です。
これこそが、私が観たいと求めていた映画でした。
「友だちのうちはどこ?」
友達は、ノートに宿題をやるのを忘れたのが、その日が3回目。
先生から「次にノートに宿題をやらなければ退学だ」ときつく叱られたばかり。
主人公の少年は、家に帰ると、その友達のノートを間違えて持ち帰ってしまったことに気付きます。
「今日中にノートを友達に返さなければ、友達が退学になってしまう」
ということで、少年は、ノートを持って家を飛び出し、友達の住む村へ向かいます。
が、友達の家がどこかもわからない。
心細くなりながらも、家を探しながら石積みの家々が並ぶ路地を行くのです・・・
子どもの頃に感じた、心細さが見事に表現されていました。
映像はどこを切り取っても一枚の風景画
風の音、日が暮れていくに従って弱くなる明るさ、生活の物音、
土の匂いまで感じられるほど、五感をフルに目覚めさせてくれる映画でした。

道を尋ねる少年の声に、窓を開けてくれた老人。
暗くなってしまった中を、老人が一緒に案内をしてくれるのですが・・・
歩みは遅いし・・・
老人は扉を作る職人。
この映画では「鉄製の扉」と「職人がつくる木製の扉」がとても示唆深く表現されているので、そこも面白い!
次に観た映画は同じ監督の「そして人生はつづく」
前述の映画を監督した男性が主人公という想定で、1990年にイラン北部を襲った大地震(死者数は3万人とも5万人とも言われる)の被災地へ向かう、それを描いた映画です。
「友だちのうちはどこ?」に出演していた少年たちは無事なのかと、主人公である監督の男性は、車に息子を乗せて訪ねていきます。
道中は復旧の車両で渋滞。
避難のテント
崩れおちた岩
ストーリー展開でドキドキハラハラさせるといった観客へのアプローチはありません。
主人公と共に、映画に出演していた少年を探している気持ちになります。
ラストシーンがものすごく美しい、超ロングの映像
山岸智子教授は次のように表現しています。
そこには三度目のバロック音楽がかかり、茶色い山肌に灌木が散在している画面に、この映画を地震被災者の同胞に捧げるとう趣旨の字幕が現われエンドロールとなる。(中略)観る者は不思議な多幸感に包まれる。
お正月休みに、是非、ご覧ください。
同じ監督の「桜桃の味」「オリーブの林をぬけて」も観てみたいと思います。