「よき出会いをキャッチできる求道の火を」

まていに

青山俊董さんの著書「あなたなら、やれる」に書かれている、私が大好きなお話しがあります。

尼僧でおられる青山俊董さんが、ローマで尻枝正行神父にお会いしたときに神父から聞いた、神父の道を志したきっかけのお話しです。

 戦争のため夫も家も失った尻枝神父のおかあさまは、幼い子らとしばらく生家に身を寄せた。戦後の窮乏はどこの家も例外ではなく、いつまでの生家のお荷物になっていることもできず、おかあさまは、粗末な小さな家でもよいから建てて独立しようと考えられた。幼い正行少年の胸にも、そのおかあさまの苦しみ、かなしみは耐えがたいものとしてひびいてきた。

 「なんとかおかあさまの手伝いをしたい!」と考えていた正行少年の目に、進駐軍が運んできた協会建設のための資材が、協会の庭に山積みされている景色が飛びこんできた。少年はさっそく出かけ、背負っていたリュックサックにその釘をつめはじめた。つまり盗むことで母の助けをしようとしたのである。

 すると、音のなく近づき、そのリュックへいっしょに釘をつめてくれる人がいる。腰を抜かさんばかりに驚いてふりあおぐと、そこに見なれない黒い服を着た長身の男の人が立っていた。その人は深いほほえみをたたえながらリュックサックを背負わせてくれ、「たりなかったらまたいらっさしゃい」という。

 少年は無我夢中で家へ飛びかえり、一晩中まんじりともせずに過ごした。翌朝「理想を見いだした!」と叫び、少年は家を飛びだし、いちもくさんに協会へ行き、その神父の弟子になったという。

青山俊董 「あなたなら、できる」より

曹洞宗の尼僧でいらっしゃる青山俊董さんは、尻枝神父が敬虔な浄土真宗の信心に生きる家庭に育ち、その出会いにスイッチが入るための電源を心の奥深くに持ち合わせていたから、出会いが宝となったと、述べておられます。

たとえ直接の機縁は盗みという悪事であろうと、みごとに花を咲かせ、ローマ法王のそばちかくにあって活躍する世界的神父となることができたのである。

(中略)

幼い人や若い人を見ていると「よき人、よき教えに出会ってくれ」と祈り、おかあさま方に会うと「よき出会いをキャッチできる求道の火を、幼少時のうちに灯し、育ててやってくれ」と祈らないではおられない。

青山俊董 「あなたなら、できる」より

 

上越から山を越えて飯山の温井地区へ出ました

途中、ススキが夕日にキラキラと輝いていました

あすも、上田情報ビジネス専門学校(ウエジョビ)の若い学生たちとの授業があります。

「良き出会いをキャッチできる求道の火を灯してほしい」と願うばかりです。