音訳ボランティアグループ「やまびこ会」の総会が午後1時半から開かれました。
メンバーが集まり、新年度の活動などを決める大切な会議です。
会議が終わり、私が一人でボランティアセンターの録音ブースで音訳をしていると・・・
「コン、コン」
扉をノックする音が。
振り返ると、やまびこ会メンバーのAおばあちゃんではありませんか!
時刻は18時半。
ボランティアセンターにいたのは、私と受付の方だけ。静まり返っていました。
扉を出て、Aおばあちゃんの手を握ると、きょうの寒さで手が冷たくなっています。
「会議に遅れちゃって・・・」と。
途方にくれたような表情に、小さいAおばあちゃんが、より小さく見えました。
とっくに会議は終わっています。
土足を脱いで入る部屋に、靴を履いたまま。
尋常ではない様子に、やまびこ会の会長さんに電話をして指示を仰ぎ、Aおばあちゃんが家に帰れるよう段取りをしました。
やまびこ会は36年続くボランティアグループ。
Aおばあちゃんは30年近く活動を続けてこられて、やまびこ会を引っ張ってこられた方です。
やまびこ会の勉強会で、一生懸命に朗読をしているAおばあちゃんの姿は、可愛らしくもあり、いてくださるだけでみんなの力が湧く存在です。
ところが・・・
きょう知ったのですが、去年秋くらいから、認知症が進んでいたようです。
それでも「やまびこ会」が大好きで、認知症のためにタクシーの呼び方がわからなくなっても、家の近くの堤防道路に立ち続けてタクシーを待ったり、ヒッチハイクをしたりして、何度か来たことがあったようです。
Aおばあちゃんの家は、活動拠点のボランティアセンターまでタクシーで3000円くらいかかる遠い場所にあります。
きょう、どうやってここまで来たのでしょうか。
手も体も冷えていましたし、薄暗くなってからここにやってきたので、かなり苦労して、やっとの思いでたどり着いたのだと思います。
冷たい手で、そこにあったビニールひもを割いてみたり、結ぼうとして困っている姿を見ていると、切なさがこみあげてきました。
会長さんに、あとで報告の電話を入れると、「Aさんは、“やまびこ会命”といった方でね・・・」と。
それを聞いて、泣けてきました。
認知症が進行しても、やまびこ会だけは忘れない、体に染みついた情熱を持った大先輩。
一方の私は、このボランティアグループに参加して4年目の未熟者。
何をとっても到底及びません。
時々、思いあがる自分。
恥ずかしい・・・。
きっと、神様か仏様が、のぼせあがる私のもとにAおばあちゃんを遣わせてくださったのだと思います。
Aおばあちゃん、寒かったね。
しまった!
総会で全員に配られた視覚障害者の利用者さんからの差し入れのお菓子を、おばあちゃんに分けてあげれば良かった・・・。