かわいいサンタさんがピンポーン

まていに

午後3時半、パソコンに向かっていると家のチャイムが鳴りました。

「※△✖☆~◇」

子供の声のようですが、何を言っているのかわからない

いたずら?

一瞬そう思いましたが、良く聞くと女の子の声で何かを言っている

「お母さんがいなくて・・(ヒクヒク)・・家・・・に入れない・・(ヒクヒク)」

(あっ、同じ階の〇〇さんちの女の子だ)

涙をしゃくりあげながら、助けを求めてうちのチャイムを鳴らしてくれたようです。

あわてて玄関の扉を開けると、そこには目に涙を浮かべて、ランドセルに黄色い交通安全のカバーと防犯ベルを付けて黄色い帽子をかぶった小さな女の子。小学1年生の△△ちゃん。

「お母さんがいなくて、家に入れない・・・」

「そう、電話してみるから、うちで待っていましょう。大丈夫よ。どうぞ。」

「うん・・・」

 

○○さんとはよく挨拶を交わすのですが、こうして家にお子さんが訪ねてきてくれたのは初めて。

お父さんの職場は存じ上げていたので、電話番号を調べて、代表に電話してみました。

この時、思ったのは、「同じ階に住む人から電話」と言われて電話に出る時の父親の心境。

「事件か事故か!」って絶対に不安になるだろうなと。

だから、電話の第一声は努めて明るく安心させる声にしようと、転送中の僅かな時間に、第一声を頭の中で予行練習。

お父さんが電話にすぐ出てくれたので、事情をお伝えしました。

そして、△△ちゃんに受話器を渡してお父さんとお話ししてもらいました。

その時も涙声だったから、お父さんは心配になったと思います。

お母さんに連絡をしてくださるということだったので、しばらく我が家で待つことに。

 

家にあった絵本「だるまちゃんとてんぐちゃん」を読んであげていると、チャイムが鳴り、赤ちゃんを抱っこしたお母さんが立っていました。

どうやら、△△ちゃんの帰りを外で待っていたのですが、どこかですれ違ってしまったようです。

「すみませんでした。」と、お母さん。

「ありがとう。」とほっとした声で△△ちゃん。

お母さんと赤ちゃんと△△ちゃんは帰っていきました。

 

私は久しぶりに小さな女の子と遊んで、とってもとっても幸せでした。

うちを頼ってチャイムを鳴らしてくれた△△ちゃんが可愛くなってしまいました。

 

しばらくすると、お父さんも職場から超高級なパンを手に、うちに挨拶に訪れてくれました。

今、考えれば、お母さんを一緒に探してあげることもできたのに、お父さんの職場に連絡してしまって申し訳なかったな。

お父さんは、やはり、「私から電話」と言われて、何があったのかと、びっくりしたようです。

いい機会でしたので、携帯電話番号も交換しました。

「すみませんでした。」というお父さんに・・・

「うちにかわいいサンタさんが来てくれてとても嬉しかったですよ。これからもどうぞ遊びに来てくださいね。」とお伝えしました。

 

夫が夕方帰って来ました。

「きょう、かわいいサンタさんが来たの💛」と、きょうの出来事をお話ししました。

夫は何度も何度も△△ちゃんの可愛い様子を思い浮かべながら、「うちのチャイムを鳴らしてくれたなんて、嬉しいなあ」と、笑顔で私の話に聴き入ってくれました。

きょうのクリスマスイブは、超高級パンが食卓に。

本当に美味しい。

心がポカポカしているからなおさら美味しい。

「このソファにちょこんと腰かけて待ってたのよ」

「ランドセルしょったままだったから、おろしていいよ、って言ったらここにランドセル置いてね・・・」

と、女の子の残像を思い浮かべながら、二人でソファを眺めたり。

ワインがいつもよりすすんでしまいました。

最高のクリスマスイブとなりました。