不思議を見つける目

まていに

新元号「令和」が発表されました

「令」の字の書き方は、中がマになるのと「令」のように真っすぐ下おろす字とがあります。

文化審議会国語分科会が2016年に出した指針で「それぞれが正しい形」としています。

(余談ですが、文化審議会国語分科会の「異字同訓の漢字の使い分け例」は、報道時代から手元に置いては使っています。おススメです!)

私の母は、半年ほど前、「令」の字について私に疑問を投げかけてきてたことがありました。

「お母さんは、ずっと令の中を、マみたいに斜めにちょんって書いていたけど、間違っていたのかしら?印刷のものと違うのよ・・・」と。

手紙を書いていて、焦ったそうです。

ずっと、間違えて書いていたのかと、不安に思ったらしいのです。

私は根拠を示す丁寧な説明もせず、「両方正しい」と言い放っていました。

母が、その違いを見つけたことに、驚きました。

私は気にしたことがありませんでしたから。

それと同じことが、先日もありました。

「数字の7の字、お母さんはずっとカタカナのクみたいに左にちょんと書いていたけど、印刷したのを見ると、みんな左についていないの。カレンダーも、新聞も、お母さんの書く数字と違うの・・・。ずっと間違っていたかしら・・・・」と、不安な声で尋ねられました。

これも、書類を書いていて、気づいたそうです。

私は、疑問にすら思いませんでした。

母が間違えていないことを教えてあげるために、上田情報ビジネス専門学校の美文字先生のお手本を見せてあげました。

お手本は、母の書いてきた数字の7と同じで、左にちょんとつけてありす。

母のように、不思議を見つける目が、私には欠けていました。

不思議を見つける素晴らしい目を持っていた人で大好きな詩人がいます。

まど・みちおさんです。

まどさんの「地球の用事」という詩が大好きです。

ビーズつなぎの 手から おちた

赤い ビーズ

指さきから ひざへ

ひざから ざぶとんへ

ざぶとんから たたみへ

ひくい ほうへ

ひくい ほうへと

かけて いって

たたみの すみの こげあなに

はいって とまった

いわれた とおりの 道を

ちゃんと かけて

いわれた とおりの ところへ

ちゃんと 来ました

と いうように

いま あんしんした 顔で

光って いる

ああ こんなに 小さな

ちびちゃんを

ここまで 走らせた

地球の 用事は

なんだったのだろう

いのちのうた まど・みちお詩集より

小さなビーズ一粒が手から落ちて、止まる。

何てことのないようだけど、不思議に思って静かに見届けている。

まどさんは、何てすばらしい目を持っていらしたんでしょう。

子供のような純粋無垢な目を失っていく自分を、身近な母や、美しい詩から気づかされています。