物産展の思い出

まていに

物産展が百貨店で開かれています。

物産展というと、思い出す出来事があります。

それは、去年、高齢の母親と訪れた、とあるデパートの北海道物産展でのことです。

海鮮丼の売り場へ行きました。

保冷の陳列ケースに海鮮丼がありましたが、そういうのってご飯が少し硬いですよね。

美味しそうな刺身やいくらが山盛りになった海鮮丼。

買おうかどうか、二人で迷っていました。

母は、すし店のカウンターで食べるときのような温かい酢飯が好きです。「冷たい酢飯」が、買うか迷っていたポイントでした。

すると、母は、店員さんに

「これチンできます?」と聞いてしまいました。

私は、心の中で「そんなこと聞かなくてもいいのに」と、他人のふりをしたい思いでした。

すると、60歳は超えた女性の店員さんは

「お寿司だから、できないでしょ、おばあちゃん!」と。

さらに・・・

順番を待っていた女性のお客さんに向かってこう言ったのです。

「このおばあちゃん、チンできるかって・・・ハハハ」

母を見下した言い方でした。

急に話しかけられた女性のお客さんは、「はぁ・・」とため息に近い小さい声を出して、困惑した表情を浮かべていました。

私は、すごく悲しくなってしまいました。

母に言うならともかく、別のお客さんに、母をバカにしたような言葉を言う必要はありません。

また、母は「おばあちゃん」と呼ばれることは、ほとんどありません。

母は、会話を楽しんでいる部分もありました。

例えば

「この容器は、軽くチンすることはできますから、お刺身とイクラは除いて、ご飯だけ軽くチンして、お刺身を戻していただけば大丈夫です。」とか、

「そうですよね、冷たいごはんは硬いですよね。でも、これはお寿司だからこのまま召し上がっていただいたほうがおいしいですよ。」とか、

せめて、「できません」と言ったとしても、次のお客さんに「おばあちゃん変なこと言ってる」と言わんばかりの言い方をする必要はなかったと思います。

怒りが湧いてきて、主催者のデパートにクレームを入れようかとも思いましたが、クレームって、その対象を良くしたい思いがあるから、進言するのであって、私の場合はただの怒りのやり場でしかないので、それはやめました。

デパートを出て、母に「ひどい店員さん!」と言うと、母はどこ吹く風。

「お母さん、そんなの全然気にしないもーん!」と、ほんと明るくあっけらかんとしていました。

今、物産展を見ると思い出すのは、その店員さんのことではなく、母のくだらない事にとらわれない姿です。

あっぱれ!

さすが、年の功!

くだらない事にまどわされていては、命の無駄遣いです。

母のようにあっけらかんとした人間目指して歩みたいです。

物産展がデパートに来るたびに思い出しています。