山口周さんの「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?」(光文社)を読みました。
帯に「ビジネス書大賞2018準大賞受賞!」とあったので手にとってみました。
これまでのような、「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスのかじ取りをすることはできない。
その理由はまとめれば3つ。
1.論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある。
2.世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある
(人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要になる)
3.システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している
(内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められる)
直観と感性の時代だというのです。
これを読んでいて、あれ? 岡潔氏も同じようなことを書いていたような・・・
と思って、以前、手にした本をもう一度、開いてみました。
岡潔(おか・きよし)の「春宵十話」です。
岡氏(1901~1978)は数学者です。
大学3年の時に「ぼくは計算も論理もない数学をしてみたいと思っている」と言っています。
?? どういうこと?
それを、わかりやすく書いてありました。
私が中学生のころ、数学の試験は答案を書き終わってからも間違っていないかどうか十分に確かめるだけの時間が与えられていました。それで十分に確かめた上に確かめて、これでよいと思って出すのですが、出して一歩教室を出たとたんに「しまった。あそこを間違えた」と気づくのです。(中略)教室を出て緊張がゆるんだときに働くこの智力こそ大自然の純粋直観とも呼ぶべきものであって、私たちが純一無雑に努力した結果、真情によく澄んだ一瞬ができ、時を同じくしてそこに智力の光が射したのです。そしてこの智力が数学上の発見に結び付くものなのです。
さらに、真善美についても、その時代を嘆いて、以下のように述べています。
いま大学に入っている男性は機械文明にばかり興味を持ち、真善美は教えにくい。頭の働きも機械的になっている。むしろこれからの傾向としては機械的なことは機械に任せ、そうでないのを教えるべきだと思うのだが、ともかく、進駐軍時代にまいた種子がいま育っているので困っている。
今はAI文明ですが、当時は機械文明だったのですね。
山口周氏の本にも「真・善・美」「直観」「感性」というワードが出ていますが、最も論理的なと私が思っていた数学の世界に生きた、世界的数学者である岡潔が、それを既に述べていました。
どちらの本も、とても興味深い本でした。
じっくり読み返したいと思います。