内田樹氏が、「街場の教育論」(ミシマ社)の中で、キャリア教育についての見解を述べている章がとても興味深く、読みました。
これまでに数百人の面接をしてきた人に内田氏が聞いた話では、「会って5秒」で合格者が決まるそうです。
同じようなことを私も他から聞いたことがあります。
社会的活動というのは「協働」であって、「競争」ではありません。
街場の教育論
内田氏は、わかりやすい例としてこんな例えを出しています。
・ヤマダくん 100点
・スズキくん 80点
・サトウくん 0点
受験競争ではヤマダくんがトップ。
でも、80点のスズキくんは、0点のサトウくんを気の毒に思って、やり方を教えたので、サトウくんが30点とれるようになった。
・ヤマダくん 100点
・スズキくん 80点
・サトウくん 30点
労働の場では、スズキくんの点数に、スズキくんの支援でパフォーマンスがあがったサトウくんの点数が加算される
だから80点のスズキくんは、30点加算されて110点となり、100点のヤマダくんより上位に格付けされる。
これで面接官が「5秒で決める」ことができる理由がおわかりになりましたか?彼らは、今目の前に立っている受験者がそこにいるせいで、自分の気分が「少しよくなった」のか「少し悪くなった」のかを吟味しているのです。受験生をチェックしているのじゃなくて、自分の身体感覚をチェックしているのです。
人がドアを開けて、椅子に座るまでの時間で、その人が周りの人の気分を軽く、浮き立たせてくれる人か、周りにいる人を気鬱にさせるタイプの人か、だいたいわかってしまうんです。
(中略)
「労働」の場とは言い換えると「協働」の場のことです。
そこに求められるのは受験校の教室で求められているような「一人だけを際だたせ、周りの人間を凡庸で愚鈍な人間に見せる」知識や技術ではありません。逆です。その人がそこにいると、その感化力で、周りにいる人たちが少しだけ元気になって、少しだけ輝きを増すような、そういう「集団のパフォーマンスを高める知識と技術」が何よりも求められている。
街場の教育論 内田樹
「佇まい」という言葉は、私が今年度のキーワードに掲げています。
醸し出すものです。
まさに、その佇まいが重要になってくるんですね。
それと、面接官も感性が高くなければなりません。
ダメな面接官もいるでしょう。
面接は面接官あってのものですから、面接で落ちたからといって、人間にダメの烙印が押されたわけではないので、落ち込みすぎないでほしいと思います。
きょうは、学生たちが、授業の中で見事な「協働」の姿を見せてくれました。
課題に対して、誰一人とも傍観者になることなく取り組む姿と、そこで交わされる言葉のやりとりに感激しました。
私が面接官だったら「全員合格!!!」
学生たちの、力を合わせて成し遂げた高揚した表情に出会えて、とても幸せになりました。
「先生!次はもっと難しいのをやりたいです」
こんなリクエストまでいただくと、私も次回は、さらにパフォーマンスを上げようと、はりきっちゃいます。
学生たちのこうした姿こそ、「周りにいる人のパフォーマンスを上げる」そのものですね!