夫がめずらしくお茶漬けを食べています。
その理由は、夫いわく、「山岡鉄舟」の話を私から聞いたから、だそうです。
山岡鉄舟とは、官軍の西郷隆盛の所(駿府)へ、徳川家最後の将軍・徳川慶喜の真意を伝えるために、命をかけて赴いた幕臣です。
大森曹玄が書いた「山岡鉄舟」(春秋社)を読んだ私は、西郷隆盛のところへ向かうときの山岡鉄舟のくだりを、興奮して夫に伝えました。
西郷隆盛の所へ行くと決めて、出発前にわが家に立ち戻った時の描写です。
「オイ、茶漬けをくれ!」
鉄舟は家人に急いで支度をさせ、茶漬けをサラサラと十杯ばかりもかっこむと、
「ちょっと出てくるぞ」
というなり、益満とともに、アッケにとられている家人を尻目に風のように出て行ってしまった。
これから、命がけで官軍のもとへ赴く矢先に、お茶漬け十杯ほどをサラサラと食べて、腹ごしらえをするとは・・・
この話を聞いた夫は、お茶漬けが食べたくなったそうです。
「オイ、茶漬けをくれ!」とは、とても言えなかったそうで、「お茶漬け食べようかなあ・・・」と言って、自分で作って食べていました。
しかも、一杯だけ。
山岡鉄舟の江戸無血開城の大きな功績は、もっと語り継がれるべきでしょうが、勝海舟に手柄を譲った形になっていて、私としては残念です。
剣・書・禅の道を極めた人だけあって、「功は人に譲れ」という言葉を実践したようです。
しばらくは、私だけの山岡鉄舟ブームが続きそうです。